4日目。
なんとか朝日小屋までは辿り着けたが、
うまくやれれば今日からとうとう栂海新道へ入っていく。
Day1(■)
Day2(■)
Day3(■)
Day4(■)
Day5(■)
SectionA(八方尾根~親不知)(■)
SectionB(八方尾根~上高地)(■)
今日のルートは
朝日小屋(テン泊)~朝日岳~吹上のコル~黒岩岳~栂海新道~サワガニ山~犬ヶ岳~栂海山荘(テン泊)。
朝は5:00頃目覚めた。
まず確認したのは足の調子。起きた瞬間から痛い。
そしてスパッツをめくってみると左ひざ内側だけが、パンパンに腫れている。
なにこれ?折れているのでは?と膝廻りを押さえたり、さすったりしてみると、
どうやら、膝まわりの腱を傷めているようだ。
左膝内側に直径8センチ大のこんもり盛り上がった痛い場所ができあがってた。
あとからネットや病院で調べた感じだと「内側側副靭帯損傷」というものらしい。
靭帯損傷には当然程度があって、それでいくと大体1度と2度の間くらいだった。
1度(靭帯の伸張又は一部線維のみ断裂)
・関節内側に軽度の圧痛
・膝の可動域は正常である
・関節の不安定はない
2度(靭帯線維の断裂が多数
見られる)
・かなりの関節硬直がある
(膝の伸展ができない)
・不安定さがある
・関節内側に強い疼痛と圧痛
3度(靭帯の完全断裂)
・受傷後の疼痛はあまり強くない
(断裂している為)
・膝の内側の安定性はない
・膝くずれが時々おこる
まぁ、病名なんてどうでもよくて、その時はどうすればこの旅が続けられて、
かつ、痛くないようにできるか?ということに集中していた。
でも、なんとか膝は曲がりそうだ。
ゆっくりと膝を曲げながら立ち上がる。立っている分にはそこまで問題でもない。
とにかく身の回りのものを手当り次第にザックに詰め込んで準備をする。
あーもう、痛い痛い。。
準備を終え、気合いを入れてハイクアップ。
昨日あんなに疲れきっていたのにある程度回復はしている。睡眠は重要だ。
朝日小屋がある位置はある程度フラットな場所にあって結構歩きやすい。
朝日岳から15分程度の「水谷のコル」からが完全に直登になる。
朝日岳ピークまでは夏道なら約1時間だが、、
この足の状態と、雪山直登となるとどのくらいかかるか。。
雪面の急斜面をチェーンスパイクで直登していく。
一歩づつ足場を踏み固めながら、ピッケル風のストックを突き刺し、
5歩進んで一旦休憩を何度も何度も繰り返す。
膝の痛みは、歩きはじめは痛んだが、アドレナリンが放出されたからだろうか?
痛いのは痛いが、そこまで気にならなくなっていた。
雪の上に飛び出している草や、木の枝をつかみながら、滑落しないように体を支える。
雪面の道なき道を開拓していく。
1時間もするとピーク手前のゆるやかな斜面に出た。写真はこのときのものだ。
ようやくほっとして誰もいないのをいいことに叫びまくった。
「わーーーーっ!」「うぉーーーーっ!」
誰かに見られたら雪山で叫びまくってる完全に変人だ。w
でも、このときばかりは叫ばずにいられなかったのだ。
なんとか旅が続けられそうということと、
少々大げさではあるが、遭難せずに済んだから。
とにかくやってやった。
嬉しい。そんな感情しかなかった。
落ち着いてしばらく歩くと、ピークへ向かうにつれて雪が少なくなっていき、地面が露出してきた。
そして、尾瀬等でよくみる木道を歩くことになった。
本当は昨日の内にここに立っていたはずの朝日岳ピークだ。
朝日岳ピークは360度を見渡せる絶景ポイントだった。
雲さえなければもっと。。。
テント場にいた時は空は完全に雪雲に覆われてドンヨリとしていたのに、
ピークに登るとこんなに素敵な景色に出会えた。
これだからやめられないのだ。
朝日岳からは朝日池、長栂山の方向へ道が続いていく。
朝日岳ピークでは、なくなった雪が復活し、またスノートレイル歩きに戻る。
ずっと、雪がなくなればいーのにーって思ってた。
7:30頃、「吹上げのコル」という看板に到着。
「千代ノ吹上」と呼ばれる分岐が、蓮華温泉の方向へ抜ける五輪尾根と栂海新道を分ける。
日本海側に向かって左側の道を歩き、とうとう栂海新道に入る。
栂海新道は日本サワガニ山岳会の10年の月日をかけて開拓された道だ。
歩く前に読めばよかったと思いつつ読めなかったが、
「栂海新道を拓く」という本にもなっていて、親不知まで辿り着ければ是非一度読んでみたい。
「栂海新道を拓く」
《北アルプスの稜線から日本海までつづく、夢の縦走路を拓いた男たちの苦闘と感動を描く!
北アルプス最北部、朝日岳から日本海親不知海岸へ向けて、
真っ直ぐに北上する一本の縦走路・栂海新道(つがみしんどう)。
多 くの登山者にとって憧れの登山コースとなっている、この全長27km、標高差2500mに及ぶ長大なルートを、わずかなメンバーで10年の月日をかけて開 拓した地元「さわがに山岳会」の感動的記録と、その後36年の月日を経て国による整備が開始されるまでの維持管理の苦労を語る。》
なんにせよ、あと30km程度。
何とか歩ききりたい。歩いている間は、足にそれほどの痛みはなくなってきた。
とにかく、今日のテント場と考えている栂海山荘へ向けて先に進む。
吹上げのコルから約2時間。
アヤメ平と呼ばれるフラットな場所で今日初めて他のハイカーに出会う。
どこかの山岳会に所属しているらしく、女性でも90ℓ程の重そうなザックを背負っていた。
僕の30ℓ程度のザックとは訳が違う。
雪山のフラットな場所をだらだらと歩くのだが、
雪山は現在地が結構わかりづらくなってしまう。
夏道を歩いていた途端に、先行者の踏み跡に釣られて進むと全く違うところへ出てしまうこともあるから。
縦走する時には、地図とコンパス、そしてGPS機器は必須のものとして携帯しておきたい。
GPSで現在地を確認しながら、できるだけルートを外れないようにしていく。
10:00頃、アヤメ平を過ぎた辺りで小雨が降ってきた。
そういえば今日は午後から天気が悪くなるのだった。。。
こんなこともあろうかと折り畳み傘をもってきたのだ。
「Waterfront (ウォーターフロント)」
この傘は98g。骨部分がカーボン製でメチャクチャ小さくて超軽量。
そして激安。
そのかわり、風ですぐに骨が逆折れしてしまうけど、
基本レイン装備は携帯しているので使用に問題なし。
そして、赤い傘は雪山に映える。w
雪の下はこんな風に穴になっていたりする。
でも、雪の上を歩いている時はわからない。
こんなとこに落ちたら最悪だ。。
盲点は木のまわり。
たまに木の周りで踏み抜いてしまって抜けなくて焦った。。
黒岩山の分岐をやり過ごして11:30頃にさわがに山に到着。
サワガニ山岳会の看板はなんかフォントがユルくていい。
朝日岳が2418mなので実に800m程下ってきたことになる。
この標高にもなるとだんだん雪もなくなってきて土のトレイルが顔を見せてくる。
桜みたいなかわいい花。
できれば花にも詳しくなりたいけどまだ無理。。
13:00頃。
目の前は犬ヶ岳。
この先に今日の宿の栂海山荘がある。あと少し。
小雨は降ったりやんだりが続き、空のどんよりはなかなかとれない。
今日は午後から雨模様だし。
あと1時間で到着できるだろうし、本降りになる前に到着できればいい。
14:00前には栂海山荘に到着。
あー疲れた。。足はなんとか歩けるまでにはなっている。
栂海山荘は赤と緑。なんかかわいらしい。
中はこんな感じ。
かなり広くて、清潔な避難小屋。
この小屋もさわがに山岳会がつくってくれたのだという。
この避難小屋は本来予約が必要だったようだが、管理している団体がなく、
募金箱に書かれている通り2000円程入れて利用させてもらうことにした。
小屋には他に一人がいて、あとから途中であった山岳会4人パーティーと
朝日岳であったおじさん一人がきて最終的には7人となった。
先行者は白鳥小屋にいこうかどうしようかずっと悩んでた。
この雨の中、小屋に入っちゃったらいかないでしょ?
夕食は小屋の片隅で済ませた。
明日が最終日なのでだいぶ食料も少なくなりザックも軽くなっている。
夜になると、雨が本降りになりまたひざが痛んできた。
先行者は日本酒を飲みながら、行かなくて良かったとつぶやいていた。
あとから来たパーティーの嬌声が少し煩わしかったが、
山小屋泊りってこんなものなのかなとおぼろげに思った。
実は山小屋泊りは初かも。
小屋の片隅で膝のマッサージをしながら呻いていると、
おじさんがテーピングをくれて、若干、腱をサポートしてくれて、こういう時に使うのかと思った。
これからはエマージェンシーに入れておこう。
こうやって自分にとっての必須装備が固まっていく。
夜中はかなり痛んだが、疲れからか次第に眠ってしまった。
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