5日目
コレが最後の日。
権現岳で予期せぬビバークの後はホワイトアウトしている森へ。。
今日がんばればようやく下界へ帰れる。
Day1(■)
Day2(■)
Day3(■)
Day4(■)
Day5(■)
Gear(■)
5日目の行程はこんな感じ
権現小屋〜青年小屋〜雲海展望台〜観音平〜小淵沢カントリー倶楽部〜延命の湯〜小淵沢駅
夜中はものすごい風が吹いていた。
昨日、辺りが暗くなる前にシェルターを張る場所を選んだのは、稜線から少し降りたところの権現小屋の脇。
そこが考えられる中で一番風が舞わないところだった。
権現小屋が風を遮ってくれるところだったから。
シェルターを張った場所の反対側には屋根まで雪が積もってしまい稜線と同化してしまっていた。
夜中は風が吹き荒れテントは揺らされ、ポールのエクステンション機構が壊れてしまっていたため
常にテントの支柱が短くならないか気にする必要があった。
朝は4:00に目が覚めた。
目が覚めたというか、うつらうつらとしていたのをやめたと言った方が正しいかも知れない。
テントを建てる際には例のタイベック凍結事件が起きてテントは畳まれつつ凍結していたけど、
剥がれを最小限で抑えることは出来たが今回は誤って盛大に破いてしまった。。。
風が凄過ぎて悠長に待っている場合でなかったのだ。
朝起き、ぎゅっと引き絞ったシュラフの隙間から雪がちらついているのが見えたw
その破れからテント内に雪が侵入してきたのだ。
テント内は雪だらけw
一度テント内を照らし、見回して雪が入ってきたくらいで特に問題ないことを確認してもう一度シュラフに戻る。
風が全くおさまらない。
次に起きたのは7:00頃。
風はおさまらない。
少し不安になってきた。
このまま風が止まなかった場合、当然このままもう一日ビバークすることになるだろうけど食料や燃料はほぼ無いに等しい。
一日くらいなら何とかなるだろうが、さらにもう一日となると話は別。
なんとか今日中に帰る方法を考えなければ。
うれしいことに電波はつながる為、天気予報を見るが完全に終日雪予報。
山の天気予報でよくみていた「てんきとくらす」の詳細には午後からAマークがついている。
??
さらに詳しくGPVをみて雲の行方と風の変化をみると10:00くらいには一度雲が切れる。
恐らくこのタイミングで風もおさまるのだろう。
おぉ、ジーザスw
ここでいこうと決めた。
となればとまだダラダラしている場合ではない。
と思いつつも寒さにココロ折れもう一度シュラフでだらだらと過ごしてしまう。。
ようやくちゃんと起きたのは9:00前。
起床し試しに外の様子を伺う。
か、完全にホワイトアウト状態。。。
い、いけるのか??
まぁ、先は思いやられるがゆっくり行けばなんとかなるかと腹をくくってテントに戻る。
ちなみに戻ったテントは崩壊寸前。。
完全にボロ小屋になってしまっている。。。
左下の方には見事に大きな開口もあいているw
断わっておくが、テントがダメな訳ではなく、自分の雑な道具の扱いでこうなっているのだ。。
本当に無様な姿をさらしてしまい恐縮です。。
タイベック凍結の件は先に触れたが、加えてポールのアジャスターが旅の途中で効かなくなってしまった。。
なんてタイミングだよ。。
おかげで、テントが崩壊しながら自立するという微妙な関係で成り立っていた。。
見事なボロ小屋感w
コレを接着剤で直したいのだが、色々な方に聞いてもご存じないみたいで。。
いまのところポリエステル用のもので対応したいと模索中。。
シェルターの悲惨さは先にお伝えした通りだけども、
この日の朝食もヒドかった。。
ガスは夕べ切れたところだったので、焚火用に常備しているエスビットのみが燃料。
下は雪のみだし、アルミポットの蓋の上でお湯をつくる。。
アルミポットの底に着いていた雪に気付かず、それがエスビットに垂れ沈火。。
ちーん。
そんなことを繰り返しているうちにライターも調子悪くなり。。。
結局湧かすことができたのはコップ(ペットボトルを切ったやつ)一杯の白湯がせいぜいなところだった。。
ちなみに伸縮するマイ箸は苦肉の策でゴトクとして使ってみたのだけど、火の当たり方が悪く焦げていた。。
当時の心境を寝袋の中でスマホのメモにいれていたみたい。
「、、、こうなると昨日の彼のトレース濃霧が気になるが、ま、なくなっているのだろう。ガスも昨日の夜に切れてしまい予備に持ってきたコケネンくらいしかもうない。参った朝になるだろうな。。。」
予想通りそりゃ参った朝になったw
まったく。
雪だらけのテントだな。。
気を取り直し、出発準備ができたのは11:00。。
ま、結局は10:00には風がやまなかったのでダラダラと過ごしていた。
ホントに気を取り直して出発。
景色は美しいが、そんなことを考える余裕も無い。
強風は少し止んでいるし、雪も落ち着いてきた。
頑張ればいけそうだ。
といったそばから鎖場や、急なトラバース地帯の連続。。
ホントに帰れるのかな。。。
初っ端から斜面をトラバースしていく変則トレイル。
ここは地味なように見えて、ハードルが高かった。。
雪×岩。
ホント嫌な組み合わせで、何度もアイゼンをひっかけ、落ちかける。
なんでこんなところなのかと思ってGPSを見ていたら、本来通れるはずの夏道は通れず、
迂回しながら歩かなければならなくなっている。
ぜーぜー言いながらGPSと実際の位置を見極めながら歩く。
斜面は相変わらずツボ足になるし、ハマれば腰まで雪が届く始末。。
おまけにトレイルは見極められない。。
体力を雪の斜面に失われつつ本当に半泣きになりながら手探りでトレイルをトラバースしていく。。
ようやくみつけたトレイルらしきものに従うと間違っていたり。。
今回思い知ったのは、新雪の雪山で斜面を10mも下ろうものなら、その3倍は時間がかるということ。
ある程度締まった雪ならたいしたことはないが、そうでなければ必死。
モフモフ過ぎる雪を文字通り泳ぐような形で登らなければならない。
急斜面ならさらに苦しくなる。。
下りには気をつけなければ。。
魔のトラバース地帯をクリアしてようやく稜線に出ることができた。
ここまでくればあとは稜線を降りていくだけ。
ふ〜〜〜〜。っと緊張感から開放された。
なんとか戻れそう。
トラバース地帯で彷徨っている間は、実は内心不安で不安で仕方が無かったから。
まぁ、なにはともあれ危険地帯は過ぎ去った。
あとは頑張って歩くだけ。
歩き続けること1時間程。
遠くの方に小屋が見えてきた。
安全圏まで戻ってきたという実感。
到着したのは青年小屋。
14:00をまわっていたところなので、通常1時間で来れるところを3倍の時間をかけてきたということだ。
ここまでの4日間はどんなに苦労しても通常タイムの1.5倍くらいしか時間がかからなかったはずなので、
これは自分が思っていた程簡単だった訳ではなく、危険はかなり真に迫っていたと考えた方が良いと思う。
今思えば、歩き初めの体力のあった時だったのが幸いしたのかもしれない。
朝も食べれなかったし、これが後半のキツい場面で夕方近かったらと思うとゾッとした。。
やっぱり雪山には気をつけなければ。。
青年小屋からは当然最短距離でしょってことで編笠はパス。
帰る気満々の最短コースを選ぶ。
途中、スリーピークス八ヶ岳で走ったコースを再びスノートレイルを歩くことができるのが少しの楽しみ。
雲海の展望台等も何の感慨も無く黙々とパスしていく。
冬と夏の違い。
この坂はキツかったと感慨にふけながら歩く。
今年は抽選は当たらず出場できないのでなんとかボランティアでもいいから参加したいな。
棒道を下りきり、退屈な林道を歩ききり、ロードをとぼとぼと歩きヘトヘトになったところへ自販機発見!!
そりゃ雪の日でも飲みますって!
このコーラは最高に美味かった。
コーラ飲みながら最後に目指したのは、とにかく疲れきっていて風呂に入りたくて途中の延命の湯へ。
最高に気持ちがよかった。
そして、最悪に自分は臭かったw
そりゃそうだよねぇ。。
時間は早くて2、3人だったけど、この日偶然一緒になってしまった方々、ごめんなさい。。
すぐに洗ったけどね。。
そして待ちに待った風呂上がりできれいになってのこの御飯。
最高っ!!
とにかく戻って来た感あった。
その後は酔っぱらいながら小淵沢駅から東京へ戻ることができた。
おつかれさまでした。
衣食住を背中に背負い残雪の美ヶ原〜霧ヶ峰〜八ヶ岳縦走を4泊5日かけて山と山でつないでいくという山旅。
美ヶ原ではスケールの大きな雪の牧場感を味わえたし、霧ヶ峰では凍る湿原で立ち尽くしてしまうくらい圧倒され、
車山高原では気持ちの良い「広がり」を感じることができた。
トレイルの途中では温泉でトランジットし、人とのふれあいを楽しみ、翌日また雪の八ヶ岳のトレイルへと戻る。
見上げれば八ヶ岳ブルーが美しい北八ヶ岳の森を歩き、いくつもの山で雪を踏みしめ、時にかき分け、山をつなぎ、
この時期の念願だった硫黄岳、横岳、赤岳など標高2800mを超えるスーパースターな高山を、
風もない素晴らしい快晴の中歩くこともできた。
朝陽や夕陽に美しく照らされる山々に囲まれ、動物と自分一人しかいない空間を何日も味わう。
こんな贅沢な旅は久しぶりだった。
もちろん、天候に翻弄されホワイトアウトにあったり、-15℃を超える寒さのなか、食糧も乏しくなったりしているのに
予定外のビバークを強いられたり、デンジャラストレイルできっちり死に近づいた瞬間もあったりと笑えない時間も過ごし、
自分が自分を信じることでしか乗り越えられないことも経験できた。
街で、日々せわしなく、メリハリない生活を送っている時間とは違い、
山の中を歩いている僕は生きているってことを存分に感じることができた。
今回の旅はいつでもやれるものではなく、何年かに一度できるかというような旅だったかも知れない。
この時期にあんなに長い距離を歩いてくることができるなんて。
素晴らしい5日間を過ごすことができた。
自分にとっては本当に愛すべき日々で、とってもエキサイティングな体験だった。
チャンスがあればまた長い山旅に出てみたいと思う。
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