僕たちが歩いたルートはこんな感じ。
Day1:茶臼岳〜八幡平湿原〜八幡平避難小屋(避難小屋泊)/5.7㎞
Day2:八幡平避難小屋(避難小屋)〜裏岩手連峰登山口〜諸桧岳〜大深山荘〜松川温泉(キャンプ泊)16.8㎞
Day3:松川温泉〜三石湿原〜滝ノ上キャンプ場(休止中)〜滝ノ上温泉〜白沼〜乳頭山〜乳頭温泉(キャンプ泊)/15.7㎞
Day4:孫六(温泉)〜一本松温泉跡(野湯)〜黒湯(温泉)/2.8㎞総距離 40.72㎞
行動時間 Day1/4時間 Day2/7時間 Day3/10.5時間 Day4/3時間
最高標高 1613m
累積標高 2235m
朝方暗い内に相談した結果、岩手山へ向かうのはやめて、足の調子が良くなさそうなマイコちゃんは
車をピックアップしに行き、残り僕といっせいくんは乳頭山に登る計画にすることにした。
このような変更も旅の醍醐味だ。
昨日からはらはらと落ちてきた雪はもしかしたらこの年初めての雪だったかも知れない。
テントから這い出て冷たい雪に触れ一人ニヤニヤとしてしまった。
マイコちゃんに後で会おうねーと手を振り、「今日もまたがんばれば、あの最高な温泉に入れるぜ」なんて
話しながら目標を乳頭温泉郷に定めて、小雪舞う中をトレイルに向かって歩いていった。
歩きはじめは気温は0〜−2度で地面に積もっていたのは約2センチ程というところかな。
これからハイクアップしていけばもっと白くなるだろうな。
「絶対に暑くなるから2枚もジャケットいらないよ」っていったにもかかわらず持ってきて
やはり暑くなって脱いでしまった人、笑
どちらもティートンブロスでTBジャケットとツルギジャケットかな?
芥子色のジャケットいい色だなー。
昔検討したけど今更いいなと思っている。
スノートレイルでの密かな楽しみのひとつは野生動物の足跡に出会えることだ。
この足跡はなんだろう?
キジ?
そんな風に想像しながら雪道を歩くのがとても好きな時間。
イッセイ君は歩きはじめはなかなかいいペースで歩いていて、いつも歩く時は先頭が多い僕の前を歩いていた。
少し待たせた時間があったのか雪にいたずら書きを残したりして遊びながらトレイルをいく。
この感じもなかなかいいなとにやけながら歩く。
昨日も思ったがこの時期のトレイルに人はほぼおらず、豪雪地帯にも関わらずスノーシューやアイゼンも必要ないので
この時期は狙い目なのかも知れない。
松川温泉から1時間程ハイクアップすると、フラットなエリアに出る。
ここは三ツ石湿原。
この三ツ石湿原にもひっそりと建つ無人小屋がある。
こんな風に半日でも歩けばどこかの小屋に辿り着けるこのトレイルはかなり安全でいいとこだなーと思えたところだ。
中を覗いてみると、無人かと思いきや意外にも人がいる。
起き抜けから宴会モードで雪見酒と洒落込んでいるようだ。
少しお邪魔させてもらいながら話をしてみると、昨日からここに泊って宴会をしているとのこと。
この人たちに昨日少し疑問に思っていたことを聞いてみた。
このたくさんの薪はどういうものなのかと。
つまり、これだけたくさんの薪(しかもかなり良質なもの)はいつ誰がどのような目的で置かれているのかと。
すると、「これは冬にこうやって遊んだり、緊急の人の為に夏だったり秋にこの辺を歩いた人が登山口からもってくるんだよ」とのこと。
やっぱりそうだったか。ローカルルール ってやつだね。
中にはどこかで購入したようで袋に名前も書いてあるものがあったので気になっていたのだ。
なんとなくそうかもなーとか思いながら昨日は使っちゃったなーと少し反省。
使ってはいけない訳ではないとしても、薪を運ばずに使用させてもらった僕たちは、
薪を運ぶためにもまたここに来なければねと話しながら先へ向かった。
ま、これでまた来る言い訳も出来るってもんだね、笑
三ツ石山荘をあとにしてしばらくいくとトレイルの先から何かがこちらにむかってきた。
ん?
一瞬しか見えなかったけど、やせ細った白い野兎が猛然と僕に向かって飛び跳ねてきて僕の股の下を通り抜けていった。
すると数秒後に黄金色の動物があらわれ、僕を見るなり急ブレーキをかけてそのまま雪のついた脇の笹薮に飛び込んだ。
後から調べるとその黄金色をした動物は貂だった。
このとき遭遇したのは野兎と貂の命がけの追いかけっこだった。
これはどこでも体験できるようなことではなく、なかなか貴重な体験でこのトレイルでの思い出のひとつだ。
このトレイルでは大木の上をすべらずに歩けるかという遊びも流行った。
もちろんすべり王のイッセイ君は足を滑らせずっこけていた。笑
たまに、トレイル上にはこんな枝のトラップも仕掛けられていたりする。笑
山深いところまで来るとずいぶんと景色もかわり、気温は-2℃程。
昨日までの秋の様相から、辺りは初冬の景色へと変わっていった。
くだりのスノートレイルをいく。
そこから1時間程下れば足下には雪はなくなり、今度は落ち葉の積もる秋のトレイルになる。
本当に今回の旅は秋と冬のまさに切り替わるタイミングにきたのだなと感じた。
しばらくいくと、滝ノ上温泉(滝ノ上キャンプ場)に出た。
ここいらで水の補給をさせてもらう。
今回の旅では浄水器が大活躍してくれている。
この滝ノ上キャンプ場は松川温泉へ寄らなかった場合のキャンプ候補地だった。
といっても現在は閉鎖されているようで温泉もなく荒れたキャンプ場があっただけだったので、
昨日の選択の方が数倍天国だったな。笑
いい時間だったので近くに見つけたレストハウスでお昼休憩にした。
今回のお昼は定番のチキンラーメン。
簡単に食べることができ、かつカロリーも400gを越えるという大活躍してくれるので自分の中では定番食。
今流行のビバークレーションの本当のライバルはこれなんじゃないかと密かに思っている。笑
今回の旅で使用したのはMYOGザック。
遠近法もあるけど山と道ミニと比べても少し小さいくらいかな?
これに4泊分の荷物が入るんだからいい感じ。
使えば使う程ここをもっとこうして。。。
なんて感想が出てくるので気分が乗ったらまた作り直そうかな。
今回の為に作ったマルチバッグ。
容量の少ないザックの時にメシなどを入れておける。
シルナイロンなどでできたものだと形がふにゃふにゃでずり落ちるのがストレスだった。
でも、山と道のStaff Pack XLの方が良さそうだなー
またもうちょっと考えてみよう。
バーナーは最近よくいつかっているノーブランドのBRS-3000T(25g)。
バーナーの性能にそんなにこだわりもないため今のところこれで十分かも。
風が吹いても風防で防げばそんなにストレスはない。
今回活躍したのは山道具ではないけどこのストール。
薄手だけどWool100%なので臭いも気にならないしとても軽量。
寝る時は首に巻く他にも寝袋の中で広げれば上面のブースとにもなるし
この日着用していた山と道メリノフーディーには、お腹に通しのスリーブがついているため
その中に入れればお腹をあっためる効果がある。
今回は寒かったのもあってお腹に入れておいたらポカポカしていい感じだった。
布状のものは手ぬぐいよろしく非常に使い勝手が良くて気に入っている。
滝ノ上から乳頭山の方面をいくトレイルは滝ノ上コースという名前がついているみたい。
その途中小乳頭まではこれまた降りた分だけハイクアップしなければならない。
昼ご飯を食べた僕らには少々キツかった。。
途中で突然出てくる白沼。
この湖畔の向こうで一泊出来たらさぞかし気持ち良いだろうに。
そこからはまたハイクアップが必要な区間。
何故かこのあたりからイッセイ君のペースががくんと落ちる。
結構キツそうだ。
急にごはんを食べて血糖値を上げ過ぎてしまったのかもしれない。
僕もトレイルレースでうどんとコーラのガブ飲みで同じような症状になったことがあった。
目の前の小山が僕たちが今目指している小乳頭。
誰かが「あの山乳首みたいだよなー」なんてとこから名前がついたのかな?
不思議な名前。
白沼の先の湿原はとても気持ちよく歩きやすかった。
空の色もどんより気味で怪しくなってきた。
イッセイ君の体調があまり芳しくなかったけれど、少しスピードアップしていきたかった。
この気温で雨なんか降られたらどっちに行くにも数時間かかる訳で低体温症のリスクが高まりそうだったから。
でも、結構な体調不良のようでスピードが上げられない。
どうやらエネルギーが足りなくなってハンガーノックのような感じかも。
体調不良の人をはげまし、天気の様子を伺いながらも美しいトレイルにも感動していた。
後ろに見えるのが小乳頭。
小乳頭を過ぎると空から小雪が舞ってきた。気温は-5℃まで落ち、風速20mの暴風に見舞われた。
稜線に出たところで強風も吹き付けていてますます危険が近づいてきた気がしていた。
雪と風のおかげで前を向くのもつらいくらいで暗い雲がかかるなか、
下を向きながら一歩づつ踏みしめて歩いた。
こんな状況でもあるので当然今日は秋田駒ヶ岳へ縦走の足を伸ばすことはやめて、
乳頭山をからはマイコちゃんの待つ乳頭温泉へ降りることとした。
それでもふと見上げて辺りを見回すとまだ初冬ということもありハイマツの緑と小雪の白のコントラストは美しく、
雄大な稜線が続いているのを見てそちら側へ進路をとりたくなりそうになるくらいだった。
暴風の中歩く乳頭山への登りはなかなか厳しいものがあったけど、山頂はすぐそこだ。
一歩づつ足下を確かめながらフードの隙間から山頂に目標を定めて歩を進めた。
頭上に重く暗い雲がかかり、暴風により雪が打ち付け顔を上げるのも億劫で下を向き、
一歩づつ踏みしめながら辿りついた山頂でふと見上げると、太陽が雲間から顔を出し、
20km先の田沢湖が「天使の梯子」の光を受けて輝いていた。
こんな風に綺麗に見えるのは初めてだった。
その瞬間、大げさではなく空と山が僕たちを受け入れてくれたように感じた。
そして暴風吹きすさぶ山頂で、僕は何故か感極まって叫び続けた。
(その時の動画があるがはひどく興奮しているため割愛。笑)
体中を駆けるこの感覚は一体何なのだ?
音楽のライブ会場でなら分かるけど、山の上でこんな感覚になるなんて!
これも僕が山を歩くことをやめられない理由のひとつかもしれない。
山頂の高山植物についた霧氷がとても美しい。
山頂直下では雪は足首まで埋まるくらい。
雪質はさらっとしていて細かい雪質。
太陽が出てきたことで雨の可能性はなくなりつつあったけど、
11月の日の入りは16;30ごろ。
既に15:00を過ぎていて、下まで下るのに2時間以上はかかるので暗闇のトレイルを歩かなきゃならない。
初めてのトレイルで足下に雪がついているため滑って頭など打てば歩けなくなる。
少しでも早めに降りておきたかった。
自分だけの時はこんな風に思うことはないのだけど、人と一緒の場合にはどうしても安全側の思考になる。
疲れ切っているイッセイ君を追いたてながら先へ進む。
氷点下の中飲んだこのコーヒーが最高に美味かったな。
このコーヒーのことを僕たちは「神の飲み物」と名付けた。笑
さぁ、急ごう。
空はだいぶ暗くなってきてしまった。
退屈な下りのトレイルの先に何やら煙と硫黄臭が。
おぉ?温泉?
一本松温泉と言うらしい。
もしかしたら明日来れるかもねってことで湯温を確認すると、丁度いいい!
「こんな温泉には是非入ってみたいねー!というか、今入りたい!!」
なんて話をしながら温泉地をあとにすることにして先を急いだ。
ようやく下へ到着。
ふう。とにかく何もなくて良かった。
麓への到着は空が白んでいる17:00過ぎの陽も落ちた夕刻になってしまった。
乳頭温泉郷でマイコちゃんと無事に合流することができ一安心。
まずはともあれ、僕たちは温泉でこの冷え切った体を思う存分溶かす必要があった。